事務所の考えで「相手のことを知らないと設計できない」ということで、障がい者施設研修に行ってきました。重度の知的障害を持つ人たちが平日朝から夕方まで活動をする生活実習所というところです。
今まで身近に知的障がいを持つ人がいなかったので、一緒に過ごすのは初めての経験でした。会話ができない仲間(共同作業所の言葉で「仲間」というらしい)とどのように意思疎通するのか、言葉でしか正確には伝わらないのではないかと思っていたのですが、言葉ではなく表情や行動で示すことを仲間は教えてくれました。
私と初めて対面した時の緊張した表情、ちらちらと私を見る視線からは私が気になるのかなと感じ、反応を一つひとつ読み取っていくと意外と素直なのかもしれないと思いました。
仲間が生き生きと過ごしている姿がとても印象的でした。活動が始まる前の自由時間、廊下にあるベッドでくつろいでいる人、椅子に座って机の上でカラフルなチェーンを回している人、部屋の隅で「ラジオ」と言ってラジオを聴いている人、そのラジオのアンテナを伸ばしに来る人、私に何度も手を振ってくれる人、机の前につい立を置いて気持ちを落ち着かせている人など、一人ひとりに合った多様な居場所があり、一人ひとりが尊重されている空間は私まで居心地よく、全員過ごし方が違うけれど共存しているところが面白かったです。
職員さんとお話をした時に、「会話ができなくても感じ取れる。どれくらい理解をしているかお互いが理解しあって、この人に会えば言いたいことわかってくれるのだと気づいてくれて、信頼関係を築くことができる」と、一人ひとりと丁寧に向き合っている職員さんの思いやりも感じました。日中の活動が終わり帰りの時間が近づいてきた頃、一人が私の方に椅子を寄せてくれました。すごく小さな反応だけど、少し心を開いてくれたのかなと思い嬉しかったです。
障がいがある仲間も私も一人の人であって、皆自分に合った場所にいるのだと思います。仲間が安心して過ごせる場所を作ってみたいです。 (北)